日本人は投資をしないらしい
(2020.03.01.改訂版)
「投資」と言う言葉を聞いて多くの人が連想するものに「株式投資」があります。
日経平均株価はしばしばニュースの見出しになりますし、景気の動向を判断する指標にも使われています。
正に投資の王道とも言える株式投資ですが、日本では実際に株式投資をしている人の割合はそれほど多くはありません。
こう言う時、本来なら1つ1つにエビデンス(根拠)を示すべきなのですが、この手のデータには様々なものが有って、どのデータを取り上げるかで内容も変わってきます。
それでも、日本では株式投資をしている人の割合が少ないと言う点についてはどのデータの結論もほぼ一致します。
株式投資をしている人の人数ベースでは全体の1割くらい、投資信託や国債などの債権を含めても3割に届くかどうかと言うのが日本の実態の様です。
投資大国・米国はもちろん、欧州やアジアの主要国と比べても日本の個人投資の割合は明確に低い値が出てきます。
詳しく知りたい方は日本銀行調査統計局のレポートなどで確認して下さい。
個人投資が少ない一方で、日本人は現金や預貯金の割合が圧倒的に高い事もよく知られています。
やはり日本の預貯金資産比率の高さは諸外国と比べても非常に目立ちます。
別にこれを悪いと言っている訳ではありません。
国民性や文化的背景、経済状況の違いなどがあるし、何より現金や預貯金を多くする選択の方が合理的だったからこそ、きっとこれまでこう言う選択をしてきたのだと思うのです。
実際、バブル崩壊後の日本の株価は20年以上に渡って低迷を続けましたし、物価も上がらず、現金の価値も下がりませんでした。
そうした状況下では現金主義も決して間違った選択とは言えません。
市場は変化しています
但し2010年代に入って、日本の株式市場は大きく動き出し経済構造も変化し始めました。
これからは今までと同じと言う考えでは通用しなくなるのではないか、そう言う視点に立てば、投資について考える事も必然となります。
経済がデフレ局面でなくなれば、株式投資は少なくとも長期的には資産を増やしやすい投資手法と言われています。
景気や物価の上昇よりも、株価の方が先行して上がる傾向があるからです。
もちろんリスクもあるものなので警戒するのも正常な感覚だと思いますが、少なくとも現在の株式投資がどう言うものかを理解しておく事は無駄ではありません。
株式投資への嫌悪感
特に年長(60代、70代以上)の方には、株式投資に対して嫌悪感を持つ方が少なくない様です。
ただその原因を探っていくと、大きな理由は昔の株式投資が抱えていた不透明さと、個人に圧倒的に不利な投資の諸制度にあったのではないかと思います。
昔の株式投資は必要な購入金額も大きく、手数料も非常に高いものでした。
インターネットで簡単に情報が手に入る現在とは違い、証券会社と個人との間には圧倒的な情報格差が存在しました。
証券会社の営業も、今ではまず認められない様な激しいもので、投資家の家に深夜まで電話を掛けて売買を促す様なスタイルの営業が日常的に行われていました。
結局大金を失う投資が後を絶たず、株式投資=怖いものと言う印象が一般に浸透していったと考えられます。
現在の株式投資環境
現在の株式投資はそうした時代のものとは全くの別物となっています。
特にネット証券が台頭した事によって株式投資を巡る環境は劇的に変化しました。
株式の売買単位は小さくなり、手数料は劇的に下がりました。
株式関連の情報サイトも無数にあり、必要な情報の多くは簡単にしかも無料で手にいれる事ができます。
証券会社の営業も、今時のネット証券会社は個人への電話営業などまずしませんし、はっきりいって電話を受けた経験すらないユーザーの方が多いのではないでしょうか。
現在は個人が株式投資を始める環境としては本当に恵まれています。
正しい知識を持ってやれば株式投資は怖いものではないし、何よりとっても面白い世界です。
株式のルーツ
株式投資は大航海時代の航海に向けた資金集めがそのルーツと言われます。
航海には何隻もの大型船に加えて乗組員の確保など巨額の費用が掛かりますが、実際に航海を行う民間人にそんな資金はありません。
そこで航海費用の拠出を国王や貴族、豪商達に求め、資金拠出の見返りに、航海を終えて戻ってきた時には持ち帰った財宝や香辛料、磁器などを出資額に応じて渡すと言う契約を結びました。
当初は持ち帰った全ての財を分けていたのですが、それでは次の航海に出る時にまた一から資金集めを始めなければならなくなります。
そこで出資の契約は、次の航海の資金を留保し、それを除いた剰余分の財を配当として分配すると言う形式に変わって行きました。
「出資に応じて配当を受け取る権利」は他の人に譲渡する事が出来たので権利自体が取引される様になりました。
正に今の株式取引に近い形ですね。
事業を始める時や資金を集める時に「株」を発行して、株の保有率(出資比率)に応じて配当を受け取ると言う方式は欧米を中心に世界中に広がり、現在では会社形態のスタンダードともなっています。
株式の売買取引も盛んになり、多くの買い手・売り手が参加できる「取引所」が整備されて今日の様な株式市場に発展していったのです。
株式会社とは
株式会社は株式を発行して投資家から資金を調達し、その資金を基に事業を行う会社の事です。
起業家は株式を発行し投資家に買ってもらう事で事業資金を集める事ができます。
銀行の融資や社債は期限までに所定の利子を付けて返還しなければなりませんが、株式発行で集めた資金は借金では無いので、企業は返す必要がありません。
その代わり、事業で利益が出た場合にはその一部を「配当」と言う形で株式の保有者(株主)に渡します。
出資者は株式を購入するとそれを証明する証券(株券)を貰います。
以前は文字通り紙に印刷された株券のやり取りが有ったのですが、現在では日本の上場企業の株券は全て電子化されておりインターネットの帳簿上でのやり取りになっています。
株式市場
株券を持っている人(株主)は、株券自体を売買する事ができます。
株券の値段(株価)はシンプルに需要と供給によって決まります。
人々が欲しがれば株価は上がるし、欲しがらなければ株価は下がります。
現在の株式市場はもう少し仕組みが複雑ですが、原則としてはそうなります。
株式の取引が増えてくると、株式の取引所(取引市場)を作ってそこに株式を持ち寄って売買をする様になりました。
その方が売り買い共に参加者が増えて、取引が成立しやすくなるからです。
こうして発展したのが証券市場です。
代表的な証券市場としては東京証券取引所の1部市場(東証1部)が挙げられます。
株主の権利って!?
株式会社が配当を出す時には、株主は配当を受ける権利があります。
また株式会社は原則的には会社の経営権(議決権)を分けて売っている様なものなので、株主は株式の保有割合に応じて会社に対して影響を与える事ができます。
配当をもっと増やせとか、もっと株価を上げろと言った圧力を掛ける事もできる訳です。
具体的には
●発行済株式の100%を保有 会社の全てを決定できる
●2/3以上を保有 株主総会の特別決議が可能
●過半数を保有 株主総会の普通決議が可能
●1/3以上を保有 特別決議を単独で阻止することが可能
●3%以上を保有 株主総会の召集、帳簿の閲覧が可能
●1%以上を保有 株主総会における議案提出権がある
となっています。
株主総会の特別決議とは「定款の変更」「取締役の解任」「合併」「解散」など企業にとって非常に重要な事項についての決議です。
発行済株式の2/3以上を保有していると、こうした重要な決議も単独で行なえる事になる訳です。
株式を100%保有していると、法律に触れない限りは会社を思いのままに動かせる事になります。
株式会社は法律的には社長のものでも従業員のものでも無く、株主のものと言う事ができます。
特にアメリカの経済界ではこの考え方が広く浸透しています。
株主の責任
株式会社が株主のものであれば、会社が潰れた時の責任も株主にあります。
但し株主の責任は限定的で、自分が保有している株式の価値にだけ責任を負います。
要は購入した株券がただの紙切れになる可能性がありますよ、と言う事です。
株主はそれ以上の責任は負いません。
会社が巨額の負債を抱えて倒産したとしても、株主がその負債や損失の責任を負う訳ではありません。
信用取引など特殊な売買を除いて、株式投資は買った金額以上に損をする事は無いのです。
これは投資をする上では大事なポイントです。
株式投資の利益
株式投資では、株を買うとその株に対する配当を受け取る事ができます。
配当の無い会社も有りますが、中には年利5%以上の配当を出す会社もあります。
また株式を購入した時の株価より売却した時の株価の方が高ければ、売買の差益を得る事ができます。
現在の株式投資ではこちらの売買差益の方が重要視される傾向にあります。
一般的には会社が成長すると、株価も上がって行きます。
実際には株価が企業の成長予測を先取りして上がって行く事が多いのですが、成長する企業の株を持つのが重要と言う意味では余り変わりません。
逆に言うと、これは成長しそうだと確信した会社が見付かったら、その会社の株を買えば、少なくとも中長期的には高い確率で利益を得られるのです。
まとめ
株式投資は「ゼロ・サムゲームでは無い」と言うとても魅力的な特徴を持っています。
誰かが得をすれば必ず誰かが損をすると言う仕組みでは無いと言う事です。
ギャンブルでは、基本的には誰かが利益を上げれば、その分誰かが損をする仕組みになっています。
競馬も宝くじもそう言う意味では同じです。
株式投資も短期的な売買についてはそうした側面を持っていますが、経済や企業が成長していけば全体の価値が拡大して多くの人に利益を齎す可能性が有ります。
株価の上昇に加えて配当や株主優待などの比較的安定した利益も有り、中長期的には多くの人が利益を得やすい投資対象と言えます。
その意味では株式投資こそ初心者でも始めやすい投資と言えのではないでしょうか。
また株式投資を始めると、投資金額の大小に関係無く情報感度も大きく変わってきます。
今までスルーしていた情報も自分のアンテナに引っ掛かってくるようになります。
それだけでも株式投資を始めてみる価値はあると思いますよ。
株式投資を始めてみませんか。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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