韓国の通貨リスク

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韓国の通貨リスク

音楽、ファッション、食文化など若い世代を中心にかつてない程のレベルで日本と韓国の文化はシンクロしています
その一方で国としての関係は徴用工問題自衛隊機へのレーダー照射ホワイト国からの除外、 韓国のGSOMIA破棄と解決の難しい問題が積み上がり、来るところまで来てしまった感さえあります。

ここは一連の両国間問題の1つ1つを挙げて考察する場ではありませんし、どちらか正しいかなどの主張をするつもりもありません。
ただ投資サイトとしての立場から検証しておきたいテーマはあります。
それは「韓国は通貨リスクを乗り越えられるのか」と言う点です。
日韓双方に主張はありそれぞれに根拠もあるのでしょうが、投資は感情でするものでは無いと考え、できる限り冷静に数字を捉えて考察をしていきます。

GSOMIAの破棄を起点に、米ドル/ウォンの為替レートは以前から危険ラインと言われる1ドル=1200ウォンのラインを安々と突破する様になってきています。
通貨の問題にどう対応するかは、間違いなく韓国にとって極めて重要な問題である筈です。
危機を煽るのでは無く、冷静にこの問題を見て行きたいと思います。

経済大国韓国

韓国は2017年の国民総生産 (GDP)で世界第11位と言う、堂々たる地位にある国です。
スマートフォンや家電製品で世界中にその名を知られている「サムソン」を筆頭に、国際的企業も多く経済的に豊かな国のイメージを持つ人も多いと思います。
ソウルなどは地価も物価も東京と大して差はなく、ファッションや音楽、化粧品など日本の人が憧れる分野も数多くあります。

ただその韓国も経済的には 一時の経済成長期を終えて停滞を余儀無くされており、様々な問題を抱えています。
サムソンや財閥への集中の問題高齢化問題なども深刻ですが、ここにきてそれ以上に深刻な問題と指摘されているのが通貨危機のリスクなのです。

通貨ウォン

通貨と言う側面から見ると一般的なイメージ以上に経済的リスクの高い国がいくつか存在している事が見えてきます。
正直な所韓国もそうした国の1つと言えます。

韓国の通貨ウォン新興国通貨と言う立場で、国際的には流通量も多くありません。
国際基軸通貨で有る米ドル日本円などと比べると、どうしても通貨としては不安定で他の通貨や国際情勢の影響をまともに受けやすくなります。
もちろん韓国もそれを黙ってみている訳ではありません。
為替の下落リスクは殆どの国が抱えている問題ですが、自国通貨の急激な下落を防ぐ為の様々な対策を打っています。
その根幹と言えるのが外貨準備金です。

世界9位の外貨準準備高

韓国は2018年2月末現在で3,948億ドル(約41兆6870億円)の外貨準備金を積上げており、世界第9位の外貨準備高を誇っています。

ところがその内訳を見てみると、外貨準備高の殆どが有価証券で占められています。
まずこの点が、通貨危機が発生した際に準備金として直ぐに充当できるのかとの指摘をされています。
有価証券が直ぐに換金できないとなれば、通貨危機の際に実際に利用できるのは

●預金 197億ドル
●国際通貨基金(IMF)特別引き出し権(SDR) 34億2000万ドル
●IMFリザーブポジション16.3億ドル

合計247.8億ドルに過ぎまなくなります。(2013年韓国銀行発表数値による)

日本を見てみると、ほぼ預金と換金性の高い米国の国債だけで1兆3000億ドルの外貨準備資産を保有しています。
経済規模にまだ違いが有るとは言っても、さすがに韓国の外貨準備資産の脆弱さが御理解頂けると思います。
韓国は国際情勢が厳しくなると、通貨も危機に晒されると言う構造を抱えています。
では韓国を取り巻く情勢はどうでしょうか。

厳しい国際情勢が韓国を囲っている

2019年9月現在、韓国が政治的にも経済的にも厳しい局面を迎えている事は確かです。
政治的に見れば、まず日本との御存じの様な冷え込みを見せており改善の糸口さえ見いだせていません。
中国との関係も芳しく無く、ミサイル迎撃システム「Third」の韓国国内配備以降は中国側が厳しい姿勢を見せ続けています。
北朝鮮についても、韓国側(文政権サイド)の親北的姿勢を弄ぶかの様に飛翔体(ミサイル)の発射実験が繰り返され、挑発的な声明で否定されています。
米国との関係もGSOMIAの破棄で決定的になった感があり、間違っても友好的なムードとは言えません。
更にはロシアまでが中国と共同で領空侵犯を実行して圧力を掛けてきています。
まさに韓国は朝鮮戦争以来もっとも厳しい国際情勢に晒されていると言っても言い過ぎでは無いでしょう。 

 IMF危機

韓国は1997年にウォンの下落に陥り、国際通貨基金(IMF)の支援を受ける国家破綻の危機にまで追い込まれた苦い経験があります。
また2008~2009年にも通貨危機を経験しています。
IMFは国家財政が果たして誰もお金を貸してくれなくなった国家政府への最後の貸し手となる国際機関です。
IMFの支援を受けると国家のお金がIMFの管理下に置かれ、厳しい再建策が突き付けられます。
韓国の方は高い自尊心を持っている方も多いので、IMFの管理がどれほど韓国人のプライドを傷つけたかについては想像に難くありません。
IMFは決して慈善機関ではなく、貸した資金の回収に走る為国民生活は遠慮なく痛めつけられます。
この時はドル/ウォンのレートが1ドル=1200ウォンを超えると、瞬く間に1400ウォン台まで為替が振れています。

スワップ協定

韓国の歴代政府や官僚も自国通貨の脆弱性を理解していない訳では無く、これまでに様々な対策を講じてきています。
外貨準備金と並んで、その核とも言えるのが通貨スワップ協定の締結です。

スワップ協定(通貨スワップ協定)とは、自国の通貨が下落して通貨危機が起きた時に、自国通貨と引き換えに相手国の通貨を予め決めていた為替レートで融通して貰えると言う協定です。
通貨危機の際に有効なスワップ協定があれば、協定額の外貨を通貨下落への対抗原資として利用できる為通貨の安定回復に役に立ちます。

資金は国際的な支払に当てる原資なので、基本的には米ドル日本円など国際的に流通していて決済に使える通貨である事が大切になります。

韓国と日本は、元々2001年から二国間のスワップ協定を締結していました。
2005年にも追加で協定を結び、合わせて総額700億ドル相当に及ぶスワップ枠を保有していました。
けれども2012年の李明博大統領(当時)の竹島上陸などで日韓関係が悪化して行く中、日本側が態度を硬化させていきます。
そして2013年7月と2015年2月の両協定の期限満了によって、日韓のスワップ協定は終了しています。  

通貨で言うと日本円は国際基軸通貨でありそのまま国際的な決済に使えます。
また日本は他の基軸通貨国(米国、EU、英国、カナダ、スイス)との間でも期限と金額の上限を定めない通貨スワップのネットワークを形成しています。
その為正直な所、日韓スワップ協定は日本側には殆ど協定を結ぶメリットは無く、もっぱら韓国側の通貨危機リスクを減らすと言う性格が強い協定になっています。
その点は韓国の当局もよく分かっています。

実際、日本とのスワップ協定の再締結に向けて現場では様々な動きが見られるのですが、韓国の国内感情への配慮もあって日本に頭を下げるかの様な姿勢は見せられず、再締結には至っていません。
日韓関係は御承知の様に悪化し、協定に向けた交渉すらできない状況に陥っています。

各国とのスワップ協定

韓国は日本以外の国とのスワップ協定締結を進めています。
これまでにインドネシア、オーストラリア、マレーシアなどと二国間スワップ協定を締結しています。
既にスワップ協定を結んでいた中国とも2017年10月に協定の3年間延長で合意しました。
560億ドル規模の中韓スワップ協定になります。
2017年11月にはカナダとスワップ協定を締結、更に2018年2月にはスイス国立銀行と上限100億スイスフランの通貨スワップ協定(期間3年)を締結しています。

基軸通貨は少ない

こうして見ると、着々と通貨防衛の体制が出来上がっている様に見えます。
一定の評価をするべきだとも思いますが、 残念ながら韓国の通貨リスクは今尚大きいと言わざるを得ません。
通貨危機に対抗する為に有効なスワップ協定が少ないと見られるからです。
過去の事例から通貨危機の際には新興国通貨や資源国通貨が一斉に下落する傾向にある事が分かっています。
その為インドネシアやマレーシア、オーストラリアとのスワップ協定は、通貨防衛上は有効で無いと判断できます。
中国は着々と人民元の国際化を目指していますがこれも現時点では不十分と言えます。
但しこれらの国は資源国でもあるので、スワップ協定を利用して相手国の資源を買うと言う事には有効かも知れません。
一方、カナダやスイスとのスワップ協定は通貨危機に有効と言えますが量的には圧倒的に足りません。
カナダとのスワップ協定では限度額は両国で協議して決めるとなっていますがこれを無制限と考えるのは極めて危険でしょう。
韓国当局は米国、英国など他の基軸通貨発行国にもスワップ協定締結を働きかけていますが、米国とは2010年にスワップ協定が終了しており、以後米国は交渉に応じていません。

尚外貨が足りない

厳しい見方をすると韓国が通貨リスクに対抗できる基軸国通貨の枠は

外貨準備高(流動性の高いもの) 247.8億ドル
●スイスとのスワップ協定(100億スイスフラン)
●ASEANに日韓などを加えたのマルチ契約による枠(384億米ドル)

併せて約750億ドル相当+カナダとの協議による枠となります。
意見は分かれますが、通貨危機への対応には最低でも数千億ドル規模の有効な外貨準備資金が必要とも言われています。
現実は盤石びは程遠い状況なのです。

マネーゲームの世界

国際的な金融の世界には実に様々なプレイヤーが存在しています。
為替の世界でも、もはや貿易や取引など実体経済のやり取りは一部でしか無く、その大部分はマネーゲームとも称される金融投資が占めています。
彼らはレバレッジを効かせて非常に大きな金額の投機を仕掛ける事ができます。

ヘッジファンドなどそうしたトレーダーの中には、時に一国の経済を潰す事すら厭わないと言う一団も存在します。
彼らには彼らの正義が有り、国家は国家でそうした集団にも対抗して行かなければいけないのです。
ところが今やヘッジマネー投資ファンドが動かせるお金は余りに大きくなっています。
日本でも 日銀が為替をコントロールしようと為替介入に踏み切っても、状況によっては介入が効かないと言う事が普通にあります。
圧倒的に潤沢な介入資金の裏付が有る日本でさえ為替のコントロールは難しいのです。

イングランド銀行を沈めた男

ジョージソロス氏は、かつて英国の中央銀行 イングランド銀行を沈めた男としてその名を世界中に知らしめました。
ソロス氏の様に国家や中央銀行を相手に勝負を仕掛けるチャンスを虎視助耽と狙っているプレイヤーは大勢います。
彼らは経済規模が大きい割に通貨や外貨準備が脆弱な国家を狙います。
そうしたグループに韓国とウォンがどの様に映っているのか、大変気になる所です。 

 ドルの影響

今米国ではFRBの利上げによって金利が上昇のペースを速めて来ています。
ここに来て利下げをからめ始めましたが、以前の様なゼロ金利政策には向かっていません。
米ドルの影響力は大きく、これによって世界中の新興国に流れていたお金が米国に還流しています。
弱い通貨は下落しやすくウォンもそこから免れません。
その時通貨防衛に失敗すればそのまま通過危機を招いてしまいます。

韓国にはチャンスがいっぱいあります。

ただ単に通貨が弱い国とは違い、韓国は万一通貨危機に直面してもその後経済を立て直して成長する為の土台が整っている国と言えます。

言葉は慎重に選ばなければいけませんが、例え通貨危機があったとしても韓国には為替的にも株式投資にしても大きなチャンスが有ります
この点はしっかり押えておくべきです。

ウォン/円取引ができるFX会社

現在、韓国ウォン/円の取引ができるFX会社は余り多くありません。
以前はくりっく365が代表的だったのですが2013年に取引を終了してしまいました。
現在取引ができる代表的なFX会社は

SBI FXトレード
●SBI証券(FX)
●IG証券(FX)
●岡三証券 (FX)

と言った会社になります。
はっきり言うとウォン/円取引に関してはSBI FXトレードが抜けていると思います。

まとめ

お隣の国 韓国には行った事が有る人、親近感を持つ人、詳しい人も大勢おられるかと思います。
一方、最近の日韓情勢もあり韓国が余り好きで無いと言う方もいると思います。
どちらにしても近くにいる国なだけに、韓国は情報も得やすく判断も付きやすい国です。
これは明らかに投資家にとってはとても大きなアドバンテージです。

国家としてどの様な構造的な問題やリスクを抱えているのかを理解していれば、何か大きな変化が起こった時にチャンスを掴む可能性も高くなります。
冷静に韓国情勢を見る事が大切です。 

今日も最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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