信用取引は本当はメリットがいっぱいなので覚えておきましょう。

株式投資
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信用取引とは

(2020.03.11.改訂)
株式取引の「信用取引」という取引方法を御存じでしょうか。
信用取引とは、証券会社に保証金や株などの資産を預け、それを担保に資金や証券を借りて売買を行う取引の事です。
信用取引には少ない資金で大きな取引ができたり、売買取引を売りから始められたリするなどのメリットがあります。
一方で、信用取引というものに対して「怖い」とか「危ない」と言うイメージを持っている人も少なくないようです。
確かに信用取引によって損失を抱え込む事例もあるので、そうした印象を持つのも無理のない所だとは思います。
ただ現実には、信用取引はリスクを減らす上でもとても有効な仕組みです。
信用取引の知識があれば株価の予測にも有効ですし、FXなど他の投資に対しても広く応用できます。
信用取引の事を知っていて損はありません。
実際に信用取引をやるかどうかに関係なく、信用取引の知識を持っている事は大きな武器になります。
単純に面白い仕組みでも有りますので、是非知っておいて下さい。

信用取引のメリット

信用取引には

●保証金や担保資産の評価額の3.3倍までの売買ができる
●信用売りが利用できる

という2つの大きなメリットがあります。

レバレッジが掛けられる

信用取引では証会社に現金や株などを預け入れ、それを担保に資金(又は証券)を借りて売買を行ないます。
信用取引では原則として、取引をしたら所定の期限内に決済するルールになっています。
決済は通常は反対売買によって実行します。
つまり信用取引で株を買った時は、所定の期間内に売って決済する訳です。
この場合、買った時の金額より売った時の金額の方が高ければその差額か利益になります。反対に売った金額の方が安ければ差額が損失になります。
損失が出た場合は保証金や担保資産から損失分が差し引かれます。
期限までに決済される事が決まっているので、証券会社は想定される「差額」の分さえ担保を預かっておけば損失を受けずに済みます。
その為、取引金額の全額を預からなくても問題無い事になります。
ユーザー側から見ると、株式購入代金の全額を用意しなくても取引ができるという話になります。
日本の株式取引では、現在個人投資家は委託保証金の最大3.3倍の金額まで信用取引を行なう事ができます。
保証金より大きな金額で売買を行なう事を「レバレッジを掛ける」と言います。
信用取引では最大3.3倍のレバレッジを掛けた売買が可能と言う事になります。
3.3倍の金額で売買をすれば、単純計算で利益も損失も3.3倍になる訳です。
但し信用取引で借りている資金や株式に対しては、借りている期間の金利を支払う必要が有り、この分は通常の株式売買(現物取引)よりも費用が多くなります。

信用売りができる

信用取引にはもう1つ「信用売りができる」と言う大きなメリットが有ります。
信用取引では担保資産を預けて、代わりに資金や証券を借りて売買を行なうのですが、この時に証券(株券)を借りて行なうのが信用売りです。
信用売りを利用する事によって、株式の売買を「売り」からでも始める事が出来ます。
ある銘柄の株価がこれから下がりそうだと思った時、どれだけ確信があっても普通の株式取引(現物取引)では打つ手が有りません。
株価が落ちて行くのを黙って見守るだけです。
ところが信用取引であれば、先に売りから入って後で買う事ができるのです。
株価が下がった時に買い戻せば利益になります。

信用売りの具体例

例えば日産自動車の株を100株、証券会社を通じて借りてきます。
期間は半年以内で年利で2%相当の金利を借株料として支払う約束で株を借ります。
実際には株券をやりとりする訳では無く、ネット上で全てのやり取りが済んでしまいます。
借りた100株は市場で売る事ができます。
但し半年以内に市場で買い戻して、100株を返さなければいけません。
売った時点の株価が1000円であれば、株価が下がれば利益がでます。
株価が仮に900円(▲100円)になった時に買い戻せば、単純計算では

100円x100株=10,000円

の粗利益になります(諸経費、税金が別途掛かります)。
現物取引ではここから手数料と税金を払ったものが最終的な利益になりますが、信用売りの場合は借株の金利も払う必要があります。
金利は年利2%だとしても、実際には日割りで計算されます。
株価が反対に上がってしまった場合、例えば株価が1100円(△ 100円)になってしまった場合は損失になります。
それでも期限迄に株を買い戻して返さないといけないので、決済します。

株価の差額+手数料+借株料

が損失になります。
銘柄にも株式市場にも上昇期と下落期が有ります。
上昇期だけでは無く、下落期にも利益を上げられる手段を持つ事は、株式投資を進める上では本当に有利になります。
信用取引では想定される差額を保証金として預ければそれで取引ができます。
ただ「想定される差額」とは言うものの、株価は日々変動します。
株価が急騰する事もあれば、急落する事だってあります。
信用取引の開始時には保証金が充分だったとしても、株価の変動によって保証金が規定に足りなくなる事も当然あり得ます。
こうした事態に信用取引では追証、強制決済と言う手順で対応します。

追証

追証は株価から計算される必要保証金率を証券会社が80%と言った形でラインを定め、それを割り込むんだ時に要求される追加の証拠金です。
追加の証拠金で追証(おいしよう)です。
追証ラインを割り込むと、期日(通常は翌日)までに必要な金額を保証金に追加するように求められます。
期日迄に保証金が足りていないと、ユーザーが行っていた取引は反対売買によって強制決済されてしまいます。

強制決済

更に大きな株価の変動が有り、証券会社が更に下に定めた保証金率50%などのラインを下回ってしまうと、今度は追証を待つ事なく強制的に決済されてしまいます。
強制決済によって差額の損失分と手数料の合計金額が保証金を上回る場合はその超過分も支払わなければいけません。
強制決済は怖い仕組みですが、逆にこの仕組みが有る事によって少ない保証金で取引が出来る信用取引が成立しているのです。

長期戦略には向かない

信用取引では保証金を基により大きな金額の取引ができる仕組みです。
反面、追証や強制決済といったルールが有る為、現物取引のように株価が下がった時に、株を保有し続けて次の株価上昇を待つ戦略が取り難い制度である事も確かです。
追証以前に、一般的な信用取引には最大で半年と言う決済の期限がありますし、借りた資金や証券の金利の負担もあります。
短期~中期の売買戦略には非常に有効ですが、長期的な株式投資には向かないと考えた方が良さそうです。

信用取引の手続きと保証金

信用取引を始める為には、証券会社と信用取引の契約を結ぶ必要があります
既に証券口座を開設していれば、殆どの場合手続きは証券会社のサイト上で簡単に行う事ができます。
但し信用取引をする為には、証券口座に30万円以上の委託保証金相当の資産が有る事が条件になっています。
自分に証券口座に30万円以上の金額が入っていればそれでも良いし、保有している株などの証券資産が充分にあれば、それでも条件を満たす事ができます。
証券資産の場合は、前日の株価終値の80%など各証券会社が設定する評価率を掛けた金額で資産額が計算されます。

株主優待を獲得する裏技

信用売りを活用する事によって使える取引の「ワザ」もあります。
代表的なのが、株主優待をリスクを抑えて獲得する方法です。
株主優待を貰う為には優待の権利発生日に対象の株を保有している必要がありますが、株主優待が人気な株ほど権利日の直後に株価が下落しやすいという傾向があります。
せっかく株主優待を受け取っても、それ以上に株価が下がってしまったら意味が無いですよね。
この時、信用取引を利用する事で株価変動のリスクを負わずに優待の権利だけを獲得できる「クロス取引」と言う方法があります。
簡単な説明をすると、クロス取引は優待株の権利付最終日までに「買い」と「売り」両方のポジションを持ち、権利確定後に決算すると言う方法です。
両方のポジションを持つ事で株価の変動リスクは無くなり、売買手数料と金利を支払えば株主優待の権利が手に入るのです。
魅力的な株主優待銘柄の場合、この方法は非常に有効な手段になり得ます。
但しクロス取引には稀に「逆日歩」という費用が発生する場合があり、これにだけは気を付ける必要があります。
特に優待株のクロス取引の際には、時に大きなリスクになる事も有るので注意が必要です。

逆日歩とは

通常の信用取引は制度信用とも呼ばれます。
制度信用では信用売りの際には証券保全機構(ほふり)と言う機構から株を借りてきて取引をします。
機構に株が充分にあれば問題は無いのですが、同じ銘柄に同時にたくさんの借株のオーダーが集中すると一時的に貸す株が足りなくなる可能性が有ります。
貸出しできる株数をオーダー数が上回ってしまった場合には、貸出側と証券会社の間で貸株料の調整が行われます。
セリの様な仕組みで高い値段(貸株料)を付けた証券会社がその株を借りるルールになっています。
ここで発生した追加の借株料が「逆日歩」です。
株を貸す側から見ると貸出料は日歩で、借りる側から見ると借株料は逆日歩となります。

逆日歩の金額

普段はほとんど逆日歩は発生しません。
逆日歩は、特定の銘柄に借株の大きな需要が発生した時に発生します。
よく発生するのは事故や不祥事などで株価の急落が予想される局面や配当・優待の権利日などです。
逆日歩の金額は1日毎に変わります。
逆日歩には状況によって金額の最大値を定めた計算式があり上限が決められていてはいるのですが、稀にとんでもない金額の逆日歩が発生して「事件」になってしまう事が有ります。

無期限信用取引

一方、制度信用では無く証券会社が独自に展開している信用取引の中には、決済の期限も逆日歩も無いと言う制度みも存在しています。
松井証券が展開する「無期限信用取引」は正にそうした制度です。
松井証券の無期限信用取引では取引の決済期限がありません。
貸株料の金利は制度信用の年利2%に対して年4%と割高ですが、金利を払う限り無期限に取引ポジションを維持し続ける事が可能です。
また無期限信用取引の制度では逆日歩が発生しません。
なのでクロス取引で株主優待を狙う時などにはリスクとコストが先に計算でき、安心して信用取引をできます。
ただ貸し出せる株数には限りがあるので、人気の株主優待銘柄などは権利確定日のかなり前の段階で在庫が無くなってしまう可能性があります。
それでも上手に使えば、本当にローコストかつローリスクで株主優待を獲得する事ができます。
非常に利用価値の高い制度と言えます。

短期信用も有ります

無期限信用とは反対に、決済期限を1週間や10日などと非常に短い区間に区切る事で人気銘柄の貸出し株を増やす証券会社もあります。
カブドットコム証券の信用株制度などが有名です。
株を借りれる期間が短い代わりに、日歩の発生しない貸株の在庫がより多く揃えられています。

まとめ

信用取引は株式投資で利益を獲得する方法や場面を大きく拡げてくれる仕組みです。
株や市場の上昇局面だけで無く、下落局面でも利益を獲得できると言うのは大きな魅力です。
また株価の次の動きに確信が持てる時にはレバレッジを掛けて大きな利益を狙う事もできます。
別にいつも証拠金の3.3倍の金額で取引しなければいけない訳ではありません。
現物取引と使い分ける事で、さまざまな局面でもっとも利益を上げやすい方法を取る事ができます。
保証金を入れて取引をすると言う手法を知っていれば、FXやCFDなど他の金融商品への投資を考える時にも圧倒的に対応しやすいです。
今後の投資を豊かで楽しいものにする為にも、是非信用取引の仕組みに注目して下さい。
今日も最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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